山形県 酒田市

vol3 「サンロク...

vol3 「サンロクIT女子」が新しい世界に飛び込み、活躍するまでの体験談を大公開!

2023年の「サンロクIT女子育成プロジェクト」に参加し、育成講座を経て仕事を受注しているという星川さん。現在は酒田市内企業のコーポレートサイト制作を受注し、打ち合わせを重ねているのだそうです。仕事ではパソコンを使用していたものの「ITのことなんて全くわからなかった」と以前の自分をそう振り返ります。「私には絶対に無理」と思っていた彼女が一歩踏み出せた理由とは―――。未知の世界へ踏み出す Curiosity—好奇心「IT女子について知ったのは、たまたま目にした新聞の記事でした。2023年の3月に仕事を辞めたのですが、その直前の1月頃のことです。おもしろそうだなと思って募集が始まるのを待っていました。HPを何度も見ては、まだかまだかってやきもきしながら。痺れを切らしてサンロクに問い合わせたりして。」新聞の記事を見てから数カ月、ずっと気になっていたといいます。パソコンは得意でも嫌いでもない、と仕事で使う程度。ITについては言葉だけ、と言う彼女がそんなにも興味を惹かれた理由を聞いてみました。「仕事を辞めたらとりあえず1年くらいは今後のことをゆっくり考えたかったんです。ITは在宅で仕事をするイメージを持っていたので、自分のペースでやれたらいいなって。」結婚以来、仕事に子育てに、と時間に追われながら過ごし、そろそろワークライフバランスを見直したいと考えるタイミングでした。ソーイングとピアノが趣味という星川さん。落ち着いた口調で言葉を選びながら答える様子から、丁寧な暮らしに憧れがあったというのも頷けます。自宅ではリラックスした環境で仕事をすることができます育成講座をはじめとする対面の学習では、ITについての漠然とした知識を深めることができ、学生時代のようなワイワイとした雰囲気が楽しかったのだそう。共通の目的を持つ仲間意識や、課題や情報を共有する新たなコミュニティに触発され、まだ何もできていないのに別の世界に踏み出したような高揚感を感じました。勇気の決断 原動力は向上心 Courage—勇気「だけど、仕事を受けるのはハードルが高くて。募集があっても無理だよな、やってみたい気もするけど無理かもって何回か見送って。」そんな折、講演会の文字起こしの仕事が舞い込みました。事務での経験が活かせるかもしれないと試しに応募したところ見事採用。実際にやってみると予想以上に難しく、担当外の部分も確認しながら作業を進めたため時間もかかりましたが、なんとかやり遂げることができました。ここで得た自信がターニングポイントだったと後に回想します。その後はランディングページ(LP)のデザイン担当に立候補。この仕事では、LP制作未経験である複数人のIT女子と、制作のサポートをするプロが一緒に取り組みました。「デザイン経験はありませんでしたが、みんなと一緒だったらできそうだと思って挑戦しました。」この頃から、本格的に仕事を受けるためにグラフィックデザインツールを契約するなど自身のパソコン環境を整え始めました。良い仕事をするための必要経費と捉えて投資した分頑張ろうとモチベーションも一層上がるのだそうです。「制作実習の時も周りに全然ついていけなかった。やっとできたと思ったらもう先に進んでいて…。もうなりふり構わず、先生が近くに来たら離さない、すみません!教えてくださいって(笑)」以前の自分なら、仕方がないと諦めていただろうと、自分自身の変化に驚いている様子。もともと粘り強いタイプ、とはいえ、いったい何が彼女を駆り立てたのでしょうか。「試しに一歩踏み出してみたら次の一歩も踏み出せちゃった」と振り返る星川さん切り開く私の道 Confidence—自信「やっぱりおもしろかったんですよね。どれも難しいですけど夢中になってのめり込む時間はワクワクするような、自分がアップデートされていく新鮮な喜びがありました。」この一年で自分が大きく変わったことを実感する、という星川さん。プラスになる可能性があるのに諦めていたらもったいない、とチャレンジする度に経験が自信となって連鎖したことでそう感じるのかもしれません。「次の仕事はウェブサイト制作なんですよ!まさか私がね…」心底信じられないというように、自身の内面にも大きな変革をもたらした一年を思い起こします。1つ目の仕事に手を挙げる時が、一番勇気の必要な場面でした。やってみたらできた、という小さな自信の蓄積は、新たな可能性を探求する好奇心をくすぐり、未知の領域に踏み込む後押しとなりました。「絶対できるわけがないって思っていたことも、今はもしかしたらできるんじゃないかなっていう気がするんです。」「これまでの私」から抜け出し、ひたむきな努力によって選んだ道を正解にしていく。その芽生えた自信が力になり、新しい舞台への大きな一歩を踏み出していくことでしょう。
2024年6月20日
vol2 「サンロク...

vol2 「サンロクIT女子育成プロジェクト」の未来を支える現場からレポート

サンロクIT女子育成プロジェクトは発足から5年目に突入。当初から「IT技術を身につけ仕事の選択肢を広げる」をテーマに活動してきましたが、2023年度はアデコ(株)との協業によりさらに強化されました。人材育成に高い実績を持つ企業との連携による効果とは―――。プロジェクトを牽引する、コンシェルジュの佐藤香奈子さんとマネージャーの栗田奈美さんにお話を伺いました。未経験からの一歩をサポートサンロクIT女子(以下、IT女子)の特徴は大きく分けて3つあります。1つ目は、雇用ではなく業務委託形態をとっている点です。時間的な制約や自身の条件に合った仕事を受注できるため、ライフイベントに合わせたキャリアを築きたい方に適しています。2つ目は、ITスキルを学ぶ独自の育成講座を受講して仕事に繋げている点です。この育成講座は、基本的なITリテラシーを学びデジタル時代に必要な能力を身につけ、受注する仕事の幅を広げることが目的です。「育成後は、仕事にチャレンジできるよう後押ししたり、不安や悩みを聞いたり…。IT女子の皆さんの気持ちに寄り添う細かなケアを心掛けています」と話すのはマネージャーの栗田さん。プロジェクトの運営から仕事の斡旋、さらにはお悩み相談と、最もIT女子と密接に関わる存在です。3つ目は、キャリアカウンセリングです。「自分の気持ちを見える化する機会になりますよね」そう話すのは、産業カウンセラーの資格を持つ佐藤さん。対話を通じて個人の価値観や個性を引き出し、自分自身と向き合うことにより内面の整理をサポートする役割を担います。経営者としての視点からプロジェクト全体の構築や営業を担当する一方で、個々の可能性を広げる多様性を尊重した組織作りを目指しています。「人を巻き込んで“好き”を仕事にしていきたい」と語る佐藤香奈子さん長いトンネルの先 ようやく見えてきた進む未来「それまでは営業から納品、という流れをつくるのに必死で…。私たちだけではその先の展望を具体的にイメージすることが難しかった」と佐藤さんは振り返ります。そんな状況を変えるため、2023年よりアデコ(株)(以下、アデコ)との協業による「教育支援プログラム」を実施しました。このプログラムは、Webサイト制作の講習やOJTにより実践力の高いスキルを身につけることを目的としたものです。「より実務に沿った育成のプロセスを踏むことで、ぼんやりと描いていたIT女子の進む道が明確にイメージできるようになった」といいます。こうして、育成と実務の組み合わせによる盤石なサポート体制で経験が浅くても仕事に取り組みやすい環境が整備されました。教育体制の強化に伴いプロジェクトの注目度はさらに高まりをみせ、所属するIT女子の人数は100名を越えました。アデコからは難易度の異なる様々な案件の紹介と手厚いフォローが提供され、仕事を受注する女子は一気に増加。2023年度末には、プログラムを終えた約60名がSNS代行やWebサイト制作などの仕事を受注する結果となりました。稼働するIT女子が増える一方で、新たな課題も見つかりました。業務の一部を切り出して委託する形態をとっていたため、徐々に需要と供給のバランスが崩れてきたのです。また、企業が求める条件と所属する女子の稼働時間が合わないことも発足当初からの課題でした。不足を埋め合うチームの力この二つの課題を解決する方法として、現在推し進めているのが業務単位での仕事の受注です。業務プロセスの企画から施行までを一括して請け負うことで、これまでより受注する業務範囲が広がります。仕事を発注する企業にとっても、人材不足を補うアウトソーシングは今後ますます注目される戦略的選択肢となるでしょう。それぞれ異なるスキルを持つIT女子が業務ごとにチームを組むことで、経験の違いや時短のニーズを互いに補い合うことができます。教え合い、協力し合って物事を成し遂げることが自然と増えていきました。また、規模の大きな案件に臨む際の体制作りに不可欠なのがまとめ役の存在です。下半期には業務の進行管理と調整役となるプロジェクトマネージャーを育成するプログラムが同時進行しはじめました。知識としてのマネジメント学習とコーチングによる自己理解で内面の成長にも働きかけ、社会人基礎力の高い人材の育成を実践しています。「自信を持って仕事を得る、それが私たちの目指す未来です」と自身も元サンロクIT女子である現マネージャーの栗田奈美さんライフステージの変化などその時々でライフスタイルに合わせた働き方が選択できることは、人生の充実を図る上で重要な要素ではないでしょうか。「学ぶ意欲の高い方が多いと感じますね」IT女子の多くは30~40代の子育て世代。仕事とプライベートの両方が大切でどちらも優先したいという願いからか、主体性を持った方が多いと感じる、とふたりが口を揃えます。また、Uターンや県外出身者の割合も高く、だからこそ地域に潜む課題に気付き、地域全体の発展に貢献したいという声が上がることに驚くこともあるのだそう。将来的には培ったスキルを地域に還元する取り組みも視野に入れています。「今まで通りじゃだめなんですよね。これまでにない形を生み出そうとしているので。」「そこが難しいんですよ」と時折苦労をにじませながらも、楽しそうに語るおふたり。「躍動するIT女子のパワーにたくさんの刺激をもらうのだ」といいます。その目線の先には何が見えているのでしょうか。「来年度はさらにプロジェクトの推進を目指しています。そのための理念を定めるのも課題の一つ。」先行き不透明な時代に対応するしなやかな柔軟性を携え、常にアップデートを試みる姿勢からは熱意と覚悟がうかがえます。目指す場所が定まれば前に進む力はさらに加速することでしょう。多様なIT女子の力を掛け算によって最大限に引き出す体制を構築し、これからも酒田から新たな価値の創出を目指していきます。
2024年5月15日
酒田市と「サンロクI...

酒田市と「サンロクIT女子育成プロジェクト」で女性の稼ぐ力を全面サポート!

はじめに生産年齢人口の減少が大きな地域課題となっている酒田市。2021年に人口10万人を切り、特に若年層の女性の流出が目立っています。その理由に、地方都市特有の課題の一つとして「仕事の選択肢が少ないこと」が挙げられます。この地に住み続けながら「やりがい」を持って働ける機会があったなら、時間や場所にとらわれず、自分のライフスタイルに合った働き方が実現できたなら、それがこの地の人材不足の解消や市内事業者の生産性向上に結びついたなら。そんな想いを形にするために、酒田市では、2018年に発足した酒田市産業振興まちづくりセンターサンロクの取り組みとして「サンロクIT女子育成プロジェクト」に着手します。酒田市の想いに共感したアデコ(株)は、「教育支援プログラム」を提供し、サンロクIT女子の育成を一緒に進めています。また、育成だけでなく実際の仕事も提供し、「稼ぐ」ことが可能になっているところがこのプロジェクトの特徴です。酒田市発「サンロクIT女子」で “日本一女性が働きやすいまち”を目指すインタビュー:酒田市 市長 矢口明子さん日本一を目指す宣言の背景には女性が活躍できる職場環境を整えることを推進していくための法律「女性活躍推進法」が2015年に成立しました。その翌年、酒田市副市長に矢口さん(現市長)が就任し、女性活躍推進事業に着手します。2017年、「日本一女性が働きやすいまち」を目指す宣言を行い、女性の活躍をオール酒田で目指していくことを示しました。2023年には市長に就任し、市内では女性の活躍を期待する機運がますます高まっています。「日本一女性が働きやすいまち」を目指す宣言をした背景の一つには、『女性が仕事を求め都会へと流出してしまう課題の解決策として、地方都市でも仕事や働き方の選択肢が広がれば、流出を抑制できるのでは』という想いがあったといいます。“酒田で働き、酒田で暮らす”を現実的に『女性は、ライフイベントにより仕事の種類が限られることが多々あり、その選択肢の少なさが女性の市外流出に拍車をかけている』と考えた矢口さんは、酒田に暮らしながら収入を得る方法を模索します。その結果、行き着いたのが「テレワーク」です。『ITスキルを身につけた女性なら、都会へ流出することなく酒田で暮らせる』と仮説を立て、サンロクIT女子育成プロジェクト(以下「プロジェクト」という。)を開始します。5年目の現在は、酒田に暮らしながら都会の仕事をオンラインで遂行する働き方を、サンロクIT女子(以下、「IT女子」という。)が実践しています。奇しくもコロナ禍でオンラインでの仕事が推奨されるようになり、ITを活用することで場所にとらわれずに仕事ができるということが立証され、プロジェクトの大きな推進力となりました。さらに矢口市長は、『IT女子のような働き方が定着することで、市外への流出を抑えるだけでなく、むしろ市内への流入を促す可能性がある』という仮説を立てます。『仕事の選択肢が増えることで、魅力的なまちとして酒田が注目され、この地で生きることを望む人が増える』と考えたのです。「酒田で働き、酒田で暮らす」ことが現実的な選択肢となるよう、更なる模索を続けています。「ここで暮らしていけます。生きていけます。やっていけます。酒田には必要なものが揃っています。IT女子もその一つです。」とプロジェクトに期待大の矢口市長みんなが輝くまちに『酒田に住まう全ての市民が、それぞれの場所で生きがいを見つけ、個性を活かして活躍できる街にしたい』と矢口市長はいいます。『人口が多い都会とは違い、酒田市の人口規模では一人ひとりの役割が大きく、活躍の場が多くあるのでは』と考えています。必要とされること、感謝されること、ありがとうという言葉を交わせること。人が暮らしていく上で、これら一つひとつが実はとても大きな意味を持っています。『自分の持っている優しさを出し合えるような、そんな社会になったらいいなとずっと思っています。』と述べる矢口市長の言葉は、酒田市が多様性を尊重し、個々の幸せな生き方を支援する姿勢を示していました。『人口10万人を切った今だからこそ実現可能なまちづくりを、酒田で叶えたい。』そう話す矢口市長の目には、優しさの中に強い光と意志が宿っています。そして、今日も奔走して市民の幸せを追求しています。サンロクセンター長が目指す「サンロクIT女子の未来」インタビュー:酒田市 副市長 安川智之さん圧倒的当事者意識を持ったサポート2018年4月に「酒田市産業振興まちづくりセンターサンロク」を立ち上げた安川さん(現副市長)。これまで市役所内の支援担当部署で、企業や経営者の方の相談に応じることは一定程度行っていましたが、より身近に、より親身にサポートをする必要性を感じ、サンロクの立ち上げに至りました。『経営者の立場に想いを馳せ、まず目の前の相手の状況を知ること。そこから全てが始まる』と考え、「圧倒的当事者意識を持って相手の立場に立ち、一緒に事業を進める」ことをモットーに、センター長としてサンロクを運営していきます。企業へのサポートは、当初「個社支援」からスタートしました。運営を進めていく中で、企業は共通の課題を抱えていることに気づきます。そこで、悩みを抱える経営者同士が課題を共有し合い、解決方法を模索していく「コミュニティ支援」に切り替えていきます。課題は企業の大小に関わらず必ず存在します。『経営者は孤独な思いを抱える方が多いです。孤立を防ぐために、地域でのリアルなコミュニティ形成を大切にしています。一人では解決できないことも、誰かと一緒になら解決できる可能性がある。コミュニティ支援によって事業者の輪が広がり、さらに酒田が発展していく』と安川さんは考えています。IT女子が稼ぐ企業への支援に取り組む一方で、安川さんは、センター長としてサンロクIT女子育成プロジェクト(以下「プロジェクト」という。)に取り組んでいきます。『現在目指していることの一つ目は、ビジネスモデルの確立です。プロジェクトの一番の目的は、IT女子が仕事として「稼ぐ」ことにあります。それぞれのIT女子には「稼ぎたい金額」があり、それを達成するためには仕事の絶対量が必要であることから、仕事量が多い首都圏からの受注獲得を目指しています。このプロジェクトの取り組みに共感していただき、ビジネスパートナーとしての関係性を築いていける企業の発掘が鍵である』と考え、日々首都圏へのアプローチを行っています。二つ目は、『IT女子として蓄積した力を、市内事業者に活かすことです。サンロクで経営者のサポートをしていく中で必要だと感じたのは、その企業の課題を見つける力、いわゆる「課題設定力」でした。その部分をIT女子が担えたら』といいます。市内事業者の歩調に合わせて、小さなことから一緒に解決していく、市内に住むIT女子だからこそ可能な「寄り添い型のコンサルタント」のような役割を想定しています。夢は大きく全国進出! 『また、このプロジェクトは移住を考える女性にも響く』と考えています。コロナ禍によりテレワークが浸透した今、IT女子のような働き方ができる酒田市は、住む場所を決める上での選択肢となり得るからです。仕事や働き方の選択肢を広げることで、酒田市が選ばれるまちとなれば、人口の流入が生まれ、やがて市内事業者への人材供給や生産性向上へと結びつくという、地域創生のビジネスモデルの一つになるかもしれません。『このプロジェクトを軌道に乗せ、全国からの業務受注と、IT女子の上場が夢です。』と話す安川さん。今後もIT女子から目が離せません。「夢はIT女子の上場です!」と熱く語る安川副市長おわりに地方都市特有の「仕事の選択肢が少ない」ことは、人口減少の問題とも結びつきが深く、多くの自治体で大きな課題となっています。かつての港町酒田のにぎわいを取り戻し、いきいきと働くことができるまちを目指すために、市ではサンロクIT女子育成プロジェクトを始め、さまざまな施策に取り組んでいます。「働きたい」が叶うまち、豊かに安心して暮らせるまちに向けて、行政運営を進めていきます。酒田市産業振興まちづくりセンターサンロクさまざまな課題をかかえる市内事業者に、ワンストップで支援をすることを目的に設立した任意団体で、「つなぐ」をテーマに360度全方位で支援を行うことが特徴です。併設のコワーキングスペースでは多様な属性の利用者が集い、いつも新しい“何か”が生まれています。山形県酒田市中町二丁目5番10号 酒田産業会館1階営業時間:9:00〜21:00休業日:祝日・振替休日・年末年始URL:https://sanroku.jp/
2024年3月28日