サンロクIT女子育成プロジェクトは発足から5年目に突入。
当初から「IT技術を身につけ仕事の選択肢を広げる」をテーマに活動してきましたが、2023年度はアデコ(株)との協業によりさらに強化されました。人材育成に高い実績を持つ企業との連携による効果とは―――。
プロジェクトを牽引する、コンシェルジュの佐藤香奈子さんとマネージャーの栗田奈美さんにお話を伺いました。
未経験からの一歩をサポート
サンロクIT女子(以下、IT女子)の特徴は大きく分けて3つあります。
1つ目は、雇用ではなく業務委託形態をとっている点です。時間的な制約や自身の条件に合った仕事を受注できるため、ライフイベントに合わせたキャリアを築きたい方に適しています。
2つ目は、ITスキルを学ぶ独自の育成講座を受講して仕事に繋げている点です。この育成講座は、基本的なITリテラシーを学びデジタル時代に必要な能力を身につけ、受注する仕事の幅を広げることが目的です。「育成後は、仕事にチャレンジできるよう後押ししたり、不安や悩みを聞いたり…。IT女子の皆さんの気持ちに寄り添う細かなケアを心掛けています」と話すのはマネージャーの栗田さん。プロジェクトの運営から仕事の斡旋、さらにはお悩み相談と、最もIT女子と密接に関わる存在です。
3つ目は、キャリアカウンセリングです。「自分の気持ちを見える化する機会になりますよね」そう話すのは、産業カウンセラーの資格を持つ佐藤さん。対話を通じて個人の価値観や個性を引き出し、自分自身と向き合うことにより内面の整理をサポートする役割を担います。経営者としての視点からプロジェクト全体の構築や営業を担当する一方で、個々の可能性を広げる多様性を尊重した組織作りを目指しています。
長いトンネルの先 ようやく見えてきた進む未来
「それまでは営業から納品、という流れをつくるのに必死で…。私たちだけではその先の展望を具体的にイメージすることが難しかった」と佐藤さんは振り返ります。
そんな状況を変えるため、2023年よりアデコ(株)(以下、アデコ)との協業による「教育支援プログラム」を実施しました。このプログラムは、Webサイト制作の講習やOJTにより実践力の高いスキルを身につけることを目的としたものです。「より実務に沿った育成のプロセスを踏むことで、ぼんやりと描いていたIT女子の進む道が明確にイメージできるようになった」といいます。
こうして、育成と実務の組み合わせによる盤石なサポート体制で経験が浅くても仕事に取り組みやすい環境が整備されました。
教育体制の強化に伴いプロジェクトの注目度はさらに高まりをみせ、所属するIT女子の人数は100名を越えました。
アデコからは難易度の異なる様々な案件の紹介と手厚いフォローが提供され、仕事を受注する女子は一気に増加。2023年度末には、プログラムを終えた約60名がSNS代行やWebサイト制作などの仕事を受注する結果となりました。
稼働するIT女子が増える一方で、新たな課題も見つかりました。
業務の一部を切り出して委託する形態をとっていたため、徐々に需要と供給のバランスが崩れてきたのです。また、企業が求める条件と所属する女子の稼働時間が合わないことも発足当初からの課題でした。
不足を埋め合うチームの力
この二つの課題を解決する方法として、現在推し進めているのが業務単位での仕事の受注です。
業務プロセスの企画から施行までを一括して請け負うことで、これまでより受注する業務範囲が広がります。仕事を発注する企業にとっても、人材不足を補うアウトソーシングは今後ますます注目される戦略的選択肢となるでしょう。
それぞれ異なるスキルを持つIT女子が業務ごとにチームを組むことで、経験の違いや時短のニーズを互いに補い合うことができます。教え合い、協力し合って物事を成し遂げることが自然と増えていきました。
また、規模の大きな案件に臨む際の体制作りに不可欠なのがまとめ役の存在です。
下半期には業務の進行管理と調整役となるプロジェクトマネージャーを育成するプログラムが同時進行しはじめました。知識としてのマネジメント学習とコーチングによる自己理解で内面の成長にも働きかけ、社会人基礎力の高い人材の育成を実践しています。
ライフステージの変化などその時々でライフスタイルに合わせた働き方が選択できることは、人生の充実を図る上で重要な要素ではないでしょうか。
「学ぶ意欲の高い方が多いと感じますね」
IT女子の多くは30~40代の子育て世代。仕事とプライベートの両方が大切でどちらも優先したいという願いからか、主体性を持った方が多いと感じる、とふたりが口を揃えます。
また、Uターンや県外出身者の割合も高く、だからこそ地域に潜む課題に気付き、地域全体の発展に貢献したいという声が上がることに驚くこともあるのだそう。将来的には培ったスキルを地域に還元する取り組みも視野に入れています。
「今まで通りじゃだめなんですよね。これまでにない形を生み出そうとしているので。」
「そこが難しいんですよ」と時折苦労をにじませながらも、楽しそうに語るおふたり。
「躍動するIT女子のパワーにたくさんの刺激をもらうのだ」といいます。その目線の先には何が見えているのでしょうか。
「来年度はさらにプロジェクトの推進を目指しています。そのための理念を定めるのも課題の一つ。」
先行き不透明な時代に対応するしなやかな柔軟性を携え、常にアップデートを試みる姿勢からは熱意と覚悟がうかがえます。目指す場所が定まれば前に進む力はさらに加速することでしょう。
多様なIT女子の力を掛け算によって最大限に引き出す体制を構築し、これからも酒田から新たな価値の創出を目指していきます。